万葉集ゆかりの奈良観光地おすすめスポット


「あをによし寧楽なら京師みやこは咲く花のにほふがごとく今盛りなり」(巻第八 三二八 小野老

小野老おののおゆが、赴任先の大宰府から平城京の都を想ってその美しさを詠んだ歌です。

京都に比べるとなんとなく地味な印象を持たれがちな奈良ですが、今年は、万葉集ブームで特に人気に火がつきそう。

令和元年の今年だからこそ、万葉集のゆかりの地から奈良を再発見しに出かけてみてはいかがでしょうか。

このページでは、奈良の万葉集ゆかりの観光スポットをまとめました。

万葉集で最も多く詠われた奈良公園

奈良公園の鹿

奈良で万葉集ゆかりの地を訪ねるなら、まずは奈良公園へ。

奈良公園は、平城京に都が置かれた奈良時代に寺社仏閣が建てられて以来、信仰や観光を目的として人々が集う、古くから愛されてきた場所です。

万葉集の中で詠われる、現在の奈良公園に関する地名は、なんと全86首にものぼります。

  • 野(春日野、浅茅原等)に関する歌 29首
  • 山(春日山、御蓋山等)に関する歌 40首
  • 川(率川、能登川等)に関する歌  17首

ひとくちに奈良公園といっても、その敷地は660ヘクタールと巨大で、園内には「春日大社」や「東大寺」「興福寺」「正倉院」などの数多くの歴史建造物を有しています。

奈良公園をすべて見て周るとなると1日では足りないほど。

さらに奈良の8つの世界遺産のうち4つが奈良公園の敷地内にあります。

奈良の世界遺産
東大寺薬師寺春日大社平城宮跡
唐招提寺元興寺興福寺春日山原始林

太字は奈良公園内にあるもの

春日大社」

春日大社出典:奈良公園公式サイト

「古都奈良の文化財」の1つとして世界遺産にも登録されている春日大社は、中臣氏(のちの藤原氏)の氏神を祀るために768年に創設されました。

全国に約1000社ある春日神社の総本社で、祭神のタケミカヅチが白鹿に乗ってきたとされることから、鹿を神使としています。

春日大社は、万葉集に数多く歌われている春日野の一部。

春日野にあはけりせば鹿ししちにぎて行かましをやしろうらむ」(巻三 四〇五 佐伯宿禰赤麿)

見どころもたくさんあるのですが、万葉集との関連でいえば、境内には万葉集に詠まれた植物「万葉植物」を植栽する「萬葉植物園」がおすすめです。

春日大社の社紋「下り藤」ですが、園内の藤の園では4月中旬~5月中旬に順に開花する20品種、約200本の藤の花が幻想的な風景を作り出しています。

萬葉植物園:藤の園出典:奈良旅ネット

ほかにも、万葉名で詠まれた四季折々の植物の8割以上を解説付きで展示。

万葉集の文庫本などを持っていけばさらに深く万葉の世界を味わえます。

 

散策に疲れて小腹が空いたら萬葉植物園正門横の「春日荷茶屋かすがにないじゃや」へ。

万葉集にちなんだ旬の野菜などが添えられた「万葉粥」でさらに気分を盛り上げましょう。

春日荷茶屋

万葉粥

出典:なら旅ネット

世界遺産と大仏の「東大寺」

東大寺大仏殿出典:東大寺公式サイト

奈良といえばやっぱり大仏のある東大寺は外せませんよね。

「すめろきの御代みよ栄えむとあずまなるみちのく山にくがね花さく」(巻第十八 四〇九七 大伴家持)

この歌は、東大寺の仏像建立に際して、陸奥の国から最初の黄金が献上され、そのことを称えた家持の長歌の反歌3首のうちの一つです。
(東大寺真言院境内にこの歌の歌碑も建てられています。)

大仏自体の大きさにも驚きますが、大仏が納められている大仏殿は世界最大級の木造建築物。

743年に聖武天皇が大仏造立の詔を発令し、安置する寺として751年に大仏殿が完成しましたが、その後二度の戦火で焼失。

東大寺に残る建物の多くは江戸時代に再建されたものです。

 

大仏様をお参りしたらぜひ、二月堂まで足を延ばしてみてください。

国宝指定されている建造物も素晴らしいのですが、欄干からの景色に心を奪われます。

東大寺二月堂

東大寺二月堂から見た風景

出典:株式会社 田中家具製作所

大仏殿越しに奈良の街を一望することができます。

夜間にはライトアップもしていて、夕闇の中ぼんやりと浮かび上がる二月堂と、街明かりにきらめく奈良の夜景が素敵です。

 

また、もう一つの国宝、国内最大の山門「南大門」も一度見ておきたい名所です。

東大寺南大門出典:奈良公園公式サイト

日本最大の山門で、中には大きな金剛力士立像が安置されています。

元興寺

元興寺出典:元興寺公式サイト

同じく世界遺産の元興寺も万葉集にゆかりのあるお寺です。

白珠しらたまは人に知らえず知らずともよし知らずともわれし知れらば知らずともよし」(巻六 一〇一八 元興寺僧)

この歌は、元興寺の優秀な僧侶が、自分の博識を周りに評価してもらえないことを嘆いて詠った歌。

境内にはこの歌の歌碑も設置されています。

元興寺は、蘇我馬子が飛鳥に建立した日本最古の本格的仏教寺院である法興寺(飛鳥寺)を、平城遷都にともなって平城京内に移転した寺院。

かつては南都七大寺の一つとして威勢を振るい、広大な寺域を有していました。

現在昔ながらの町屋建築で人気のスポット「ならまち」ももとは元興寺の境内。

ならまち

「ならまち」も時間があれば合わせて散策したい人気観光スポットです。

万葉集ゆかりの奈良観光スポット

奈良県立万葉文化館

 

奈良県立万葉文化館出典:なら旅ネット

あまり知られてはいませんが、明日香村には万葉集と中心とした古代文化に関する総合文化施設「奈良県立万葉文化館」があります。

「令和」にちなんだ所蔵品も多数あり、「梅花の宴」の情景を描いた日本画や、江戸時代の写本、屏風などを一般公開予定です。

ますます恋する万葉集

奈良県観光局が運営する「歩く・なら」では、万葉集の文庫を片手に、奈良県内にある万葉スポットを訪ね、歌に詠まれた情景を現地で味わってもらうことを目的とした「ますます恋する万葉集」というページも用意。

この中の「平城京跡ルート」は、約2.1kmを歩きながら当時の都への思いを歌った詠み人へ思いをはせることができます。

佐保路・佐保川

「わが背子が見らむ佐保道さほぢ青柳あをやぎ手折たをりてだにも見むよしもがも」(巻第八 一四三二 大伴おほともの坂上さかのうへの郎女いらつめ

現在の佐保山町という地域には、標高100メートルほどの「佐保山」と呼ばれる丘陵がありました。

奈良時代の佐保山の裾野は、高級貴族の邸宅地で、その風光と立地の良さから大伴家持、旅人、坂上郎女ら大伴氏の邸宅や藤原氏の邸宅「佐保殿」などがあったといわれています。

東大寺手貝門から西に延びる、平安京の南一条大路から法華寺までを「佐保路」と呼んでいます。

万葉集にはその佐保で詠まれた歌、佐保を詠んだ歌も多いため、佐保路には多くの万葉歌碑が置かれています。

「月立ちてただ三日月の眉根まよねかき長く恋ひし君に逢へるかも」(巻第六 〇九九三 大伴坂上郎女)

また、佐保を流れる佐保川は、奈良を代表する一級河川。

特に春の桜のシーズンが人気で、川を挟んで両岸に並ぶ桜並木は5kmにも及びます。

出典:奈良県ホームページ

一般的な奈良観光ではあまり有名ではありませんが、多くの歌人たちが愛した佐保は万葉集ゆかりの地としてあえて訪れてみてはいかがでしょう。

吉野

宮滝遺跡(吉野川)出典:文化遺産オンライン

「見れど飽かぬ吉野の河の常滑とこなめの絶ゆることなくまた還り見む」(巻第一 〇〇三七 柿本人麿)

奈良の「吉野」というと、桜の名所で世界遺産登録もされている「吉野山」が有名です。

ですが、万葉集でその美しさがいくつも詠われてる吉野は、吉野山ではなく、天皇が築いた吉野宮という離宮があった場所のこと。

現在は吉野町の国栖・中荘エリアがそれに当たります。

吉野町全体が自然と歴史的な寺社仏閣が調和して一体になった、神秘的な観光地で、全部を見て回るだけで旅行が終わってしまうほど。

できれば万葉の歌人たちがいくつも歌に詠むほど美しい、吉野の山麓から流れてくる清流だけでも見に行っておきたいですね。

象の小川出典:吉野町ホームページ

「昔見しきさの小川を今見ればいよよさやけくなりにけるかも」(巻第三 〇三一六 大伴旅人)

夢のわだ言出典:吉野町ホームページ

いめのわだことしありけりうつつにも見てけるものを思ひし思へば」(巻第七 一一三二 作者不詳)

「夢のわだ」は、象の小川の水が吉野川に流れ落ちる場所のことです。

万葉集ゆかりの奈良観光まとめ

今回は万葉集にゆかりのある奈良の観光スポットをまとめました。

歴史の古い奈良は有名な観光スポットが盛りだくさん。

修学旅行なんかでも訪れるので、京都・大阪と合わせて有名なところだけ観光して、

「奈良は昔行ったことがあるからいいや」

と、旅行の候補から外してしまっている人もおおいのでは?

万葉歌人たちが住んでいた平城京には、紹介しきれなかった万葉集と縁のある名所がまだまだたくさんあります。

令和元年の今年は、万葉集の文庫を片手に、そんなゆかりの地を巡り奈良の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか?